6. 部会・研究会アニュアルレポート
燃料電池関連触媒研究会
1. 研究会の目的
地球環境保全と資源の高効率利用の立場から燃料電池の開発が人類的課題となっている。 既に2009年には家庭用コージェネシステムENE・FARMが発売され、2014年にはFCVの一 般販売が開始された。したがって、本技術の本格的普及のためには電極触媒や水素の製造・ 貯蔵技術等のブレークスルーが必要不可欠であり、触媒研究者が果たすべき役割は非常に大 きい。本研究会では、各種燃料電池の電極触媒と燃料電池用燃料処理プロセスをはじめ、燃
料電池を反応器として応用した新規多機能型反応器など、燃料電池技術に深く関わる触媒お よび触媒プロセスを対象として、高活性・長寿命触媒並びに低価格触媒の開発、触媒調製法 の改良、触媒反応機構の解明、触媒基礎物性の解明、新しい電極触媒概念の構築、及び燃料 電池用触媒に関わる評価法、解析法並びに利用技術などに関心のある基礎および応用分野の 研究者が研究会、学術講演会、学術情報交換などを行うことを目的としている。
2. 研究会活動の概略、動向、展望(敬称略)
本研究会は平成13年度まで設置されていた「電子または光子の関わる触媒研究会」のアク
ティビティーの一部を引き継ぎ、平成14年度に燃料電池研究という視点から改質触媒も含め
た分野を包括して発足した。世話人代表として平成 14~16 年度は高須芳雄(信州大学名誉教
授)、17~19年度は石原達巳(九州大学)の下に活動を行い、平成20~25年度は吉武 優(燃料電 池開発情報センター FCDIC)、平成 26 年度から大門英夫(同志社大学)に交替して活動を継続
してきた。平成14~29年の 16年間に公開セミナー、触媒フォーラム、見学・講演会、触媒
討論会へのセッション参加、研究会、宿泊セミナー、福岡水素エネルギー未来展示会へのブ
ース展示、出版(「燃料電池の解析手法」(化学同人))、ならびに参照触媒・評価法の検討など、
様々な活動を行ってきた。現在、34名の世話人体制になっている。
平成29年度では、第120回触媒討論会(9月12日~14日@愛媛大学)へのセッション参加を 行ない、第10回新電極触媒シンポジウム&宿泊セミナー(10月27日~28日@東レ総合研修セ
ンター)では「高活性と高耐久性を両立する触媒を目指して」をテーマとし、FC懇談会および
FCDIC との共催で開催した。平成 30 年度は前年度に引き続いて第 122 回触媒討論会(9 月
26~28日@北海道教育大学函館校)でセッション参加し、第11回新電極触媒シンポジウム&宿
泊セミナー(10月26日~27日@東レ総合研修センター)を開催する。さらに、FCDICとの協賛 で第25回燃料電池シンポジウム(5月17日~18日@タワーホール船堀)で触媒に関するジョイ
ントセッションを行う予定である。
3. 世話人代表
大門英夫(同志社大学)
〒610-0321 京都府京田辺市多々羅都谷1-3 同志社大学理工学部 電気化学教室
第三編 触媒学会活動記録
4. トピックス(敬称略)
燃料電池自動車(FCV)はガソリン車並の航続距離や短い燃料充填時間が確保され、2014 年
12月から一般販売が開始された。FCVの本格普及には触媒と電極に関する継続的な研究開発
により、更なる高活性化、高耐久性化および低コスト化が必要である。今年度の第10回新電
極触媒シンポジウム&宿泊セミナーでは、TEMによる PEFCの材料分析、PtCo とPtRu ナノ
クラスター触媒、UHVで作製した薄膜モデル触媒の物性、固体高分子形燃料電池触媒層の構
造形成過程と性能への影響、Pt 系触媒の劣化挙動に与える電位サイクル波形の影響、カーボ
ンの化学的特性と材料応用および CO 耐性を目指したPEFC 用アノード触媒について下記の
内容で講演して頂いた。参加者数は講師を含め、76名であった。
・Pt系触媒の劣化挙動に与える電位サイクル波形の影響 (FC-Cubic 菅原生豊氏) ・PtCoとPtRuナノクラスター触媒 (京都大学 佐藤勝俊先生)
・電子顕微鏡を用いたPEFC電極部の評価 (東レリサーチセンター 増田昭博氏)
・炭素の構造と特性を生かした材料応用 (つくば産業技術総合研究所 吉澤徳子氏)
・CO耐性を目指したPEFC用アノード触媒 (山梨大学 矢野啓先生) ・UHVで作製した薄膜モデル触媒の物性 (東北大学 轟直人先生)
・日産自動車における燃料電池触媒層の開発状況 (日産自動車 大間敦史氏)
右記ウェブサイト参照 http://www.cstf.kyushu-u.ac.jp/~ishihara-lab/FC_kenkyukai2/
5. 今後の展望
燃料電池の本格普及には、高活性で高耐久性を有する電極触媒を低コストで合成する課題
がある。平成 30年度の宿泊セミナーでも、この課題に沿ったテーマ設定を行う予定である。